皆さん、こんにちは。今日もだらだらしてますか?
どうも、だらり庵 庵主のクロギタロウです。
「人生に寄り添う1冊を楽しむ人の様子を写真に残したい」
そんな想いと共にスタートした撮っておきの1冊「本とあなたのポートレート」、略して「ホントレート」
ついに2ケタ、10回目となる今回は、並々ならぬFUJIFILM愛を爆発させるブロガーの方に教えていただいた1冊です。
「こんなにも自分にとって大切な1冊だったんですね。気付くことができて良かった」そんな言葉も飛び出した今回は、一体どんな「撮っておきの1冊」だったのか、早速教えてもらいましょう!
お話を伺った人
シュンスケさん
熊本在住のブロガー。主にFUJIFILMのカメラやレンズを、魅力的な文章やメーカーの公式写真かと見紛うほどの美麗な写真で紹介する「Cola Blog」を運営。FUJIFILMユーザーからは畏敬を込めて「FUJIFILMブログ界の首領(ドン)」とも。愛する妻、息子たち、そして愛機X-Pro2とのほのぼのした生活の様子に癒される人も。
僕たちはいつのまにか大人になってしまっているんですね
「申し訳ないのですが……」とシュンスケさんがリュックから取り出したのは、なんとサン=テグジュペリ『星の王子さま』
ホントレート 第6回で書評家のみずもとさんに教えていただいたのと同じ本です。世界中で読み継がれてきた名作ですから、いつかは被るだろうと思っていましたが、まさかこんなに早くにその時が訪れるとは笑
とはいえ、本が同じでも人が変われば、その本に対する想いはまた違うもの。上の写真をジッと見ていただくと分かるかと思うのですが、タイトルの上にぽこぽことへこみがあります。この辺りにもシュンスケさんと、この1冊だけの間に流れた時間が感じられます。
と思いきや、この本が共に過ごしてきたのはシュンスケさんだけではなかったようで。
「これはもともと僕の父が持っていた本で、僕が自分で買ったものではないんです」
シュンスケさんの『星の王子さま』は、読書好きのお父様の蔵書だったのですね。
さらにシュンスケさんは続けます。
「最初は僕が幼かった頃に、母が読み聞かせてくれたようです。内容について何を思ったのかはほとんど覚えていなくて、絵に対して抱いた印象が強いですね。挿絵は作者より僕の方が上手いと謎の自信を持ったり(笑)」
1冊の本について両親が関わっているというのは、なんだか珍しいような気がします。シュンスケさんだけでなく、ご家族の1冊だったのですね。
『星の王子さま』との長い付き合いを経た現在、改めて読み返してみてあることに気付いて驚いたのだというシュンスケさん。
「今読むと自分が思った以上に大人になっていてビックリしました。作中で出てくる大人だなあ。そうなっているつもりはなかったんだけど……」
『星の王子さま』の中で大人は、物事を数字でしか計れない、一面的な常識で凝り固まった視点しか持てない生き物として描かれています。
そんな大人に自分の姿が重なって見えたというシュンスケさん。ほとんどの人が知らず知らずのうちに、いつの間にか大人になるのでしょう。生きていれば仕方のないことなのかもしれません。
それでも、そこに気付けるか気付けないかは大きな差があるような気がします。
「今読み返してみて、少しスッキリしました。やっぱり良い本ですね」
気付かせてくれた『星の王子さま』の表紙を愛おしそうに撫でているシュンスケさんの様子が印象的でした。
酒飲みのページを増やしてほしいよね
一度読み始めると、どんどん先が気になる作りになっているのが素晴らしいと語るシュンスケさん。ですが納得のいかない点もあるようです。
「酒飲みの人の描写があっさりすぎてかわいそうだなと思います。呑み助のページ、1ページだけですもん。他の星の人たちはページ割いてもらってるのに、ひどい!笑」
もうちょっとお酒飲みに対して優しくしてあげてほしいそうです。ご自身もお酒が大好きだからこその、心の底からの言葉のようでした笑
酒飲み以外の星の住人たちについても、彼らの様子を見ていると、自分のことが書かれているような気になるといいます。
それはやはり、長い時間を共にしてきた本に書かれていることだからなのでしょうか。うまく言葉にはできないけれど、と前置きして一言。
「やっぱり、初めて読んでもらった時から、他の本とは違うという感じはあったんだと思います。手持ちの本の中で、読み返した回数はこれが一番多い。というより読み返す本なんてほとんど無いんです」
普段はノウハウ本を読むことが多いというシュンスケさん。
冗談交じりに「腰痛の治し方とか読みますよ」と言いながらも、『星の王子さま』とのこれまでの核心について触れるようなところでは、一言一言じっくりと口にされているのが伝わってきました。
SNS上ではおどけた様子を見せることの多いシュンスケさんの真剣な様子に、溢れた言葉の重みを感じました。
そんなシュンスケさんと『星の王子さま』の付き合い方は今、新たな局面を迎えているようで。ご長男も大きくなって、来年には小学校入学。
今よりも幼かった頃に『星の王子さま』を読み聞かせたことはあるのだそうですが、絵も含めて「え〜なにこれ〜」と、ピンときていない様子だったといいます。
それから時が経ち、そろそろ息子さんに譲り渡した方がいいのかもしれない、と思い始めたというシュンスケさん。長い年月を超えて、親子三代で1冊の本を楽しめるって素敵だと思います。
「読みたくなったら、息子に貸してくださいって頼めばいいですしね」
そう茶化すシュンスケさんは優しいお父さんの顔をされていました。
これから息子さんたちへと引き継がれてゆくであろう『星の王子さま』が、彼らの心にどんな思いを抱かせるのか、それはシュンスケさんご自身にも測れないことでしょう。
ひょっとしたら取り立てて興味を持たれないかもしれません。
それでも未来へ繋いでいきたいと思える本に出会えたシュンスケさんは、本当に幸せなのだと思います。
撮影を終えて
実はこのホントレートが始まった当初から、シュンスケさんはこの企画を色々と気にかけてくださっていました。折に触れ「この企画はとても良いと思う。ずっとずっとやり続けてもらいたい」というような言葉をいただいたりもしていました。
そんなシュンスケさんの「撮っておきの1冊」を紹介できるという運びになった時、僕は密かに震えました。シュンスケさんからすれば歯牙にかける必要も無い、僕のようなペーペーの話を親身に聞いてくださり、応援してくれる。
シュンスケさんが伝えたい想いをどれだけカタチにできているかは分かりませんが、偽りのない感謝の気持ちを込めて書きました。シュンスケさんと『星の王子さま』の魅力が伝わるような記事になっていることを願ってやみません。
というわけで第10回目のホントレートはここまで。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。今後も素敵な人や本との出会いを期待して、バイバイ!
あなたと大好きな1冊の姿を写真に残しませんか?
ホントレートのご依頼は上記のページをご覧ください。