だらり庵の本棚

【#だらり庵の本棚 2】人生いろいろ、食べ方もいろいろ『食べ方図説 崎陽軒シウマイ弁当編』

「1:2」これだけは決まっている。味の濃いメインを張るおかず1に対してご飯2の割合で、かっこむ。僕の中におけるほぼ唯一といっていいほどの食事のルールだ。皿の上におかずだけが残らないように、慎重に残ご飯量を計算しながら、指揮棒さながらにお箸を振るう。おかずを余らせても、ご飯を余らせてもいけない。両者が綺麗に同じタイミングで舞台上から姿を消した時、僕は勝利の余韻に浸りながら食後のお茶をすすることができるのだ。

というような、いわば食べ方の流儀というものが人には多かれ少なかれあると思う。そこにフォーカスを合わせすぎた、最高に突き抜けた1冊を見つけてしまった。それが食べ方学会によるZINE『食べ方図説』だ。

カツカレー、タマゴサンドなどよく慣れ親しんだ食べ物にも、一歩踏み込めば千差万別、深遠なる食べ方の世界があるという。そんなバカなと侮るなかれ。1人として同じ人間がいないのだから、食べ方だって人それぞれに違うのは当然のこと。特にそれが、多様なオカズを詰め込んだ「弁当」である場合、1億いれば1億通りの食べ方曼荼羅が見えてくる。

今回僕が手に入れたのは、各界の著名人による崎陽軒のシウマイ弁当へのアプローチの仕方を集めた「崎陽軒シウマイ弁当編」各人の初手からフィニッシュまでを細かく丹念に追う姿勢には執念すら感じるほど。からしの使い方から小梅の取り扱い、果ては弁当箱の置き方に至るまで、まるで将棋の棋譜を眺めているかのような一大スペクタクルが紙面に展開されており、最高にイカしている(ホントにこんな食べ方してるの?笑 と思いたくなるのはご愛嬌)

そして何より大見得切っての「はじめに」が実に良い。美食の世界では日々最高の食材を最高の調理法で味わうために研鑽が積まれているにも関わらず、食べ手はどうか、食べ方について考えたことがあるか、と問いかける。「食べ方」を疎かにして、食文化の向上はありえないとまで言い放つ、その意気やよし。

ここはひとつ、シウマイ弁当食ってやろうじゃないの、と思わざるをえない、お腹のすく1冊。

目にも鮮やかなからし色がいい感じ。