皆さん、こんにちは。今日もだらだらしてますか?
どうも、だらり庵 庵主のクロギタロウです。
「人生に寄り添う1冊を楽しむ人の様子を写真に残したい」
そんな想いと共にスタートした撮っておきの1冊「本とあなたのポートレート」、略して「ホントレート」
3回目となる今回は、地元を拠点に奮闘するデザイナーさんに教えてもらった1冊です。
お話を伺う前に、勝手にデザイン関係の1冊を持ってこられるものと思っていたのですが、見せていただいた本を見てびっくり。デザイナーさんの手には、図鑑が。
デザインと図鑑?なぜかは分からないけど、面白くなってきやがったぞ……。一体どんな「撮っておきの1冊」なのか、早速教えてもらいましょう。
お話を伺った人
西嶋 輝さん
デザイナー。兵庫県加古川市出身。加古川市在住中。デザイン系専門学校卒業後、製版会社、広告制作会社を経て、加古川市を拠点に活動開始。ブランディングを軸に、「聴くコト」「知るコト」からデザインが始まり、ロゴ制作やグラフィックデザイン、商品企画、パッケージデザイン、Webデザインなど幅広くデザインを行う。豆乳が大好き。今回の撮影中にも彼のそばには豆乳が。
デザイナーの終わらない夏休み
撮影の前のやり取りで「思い浮かぶ本はたくさんあるんですけどね〜」と話してくれていた西嶋さん。どんなお洒落な本が出てくるのかと撮影に臨んで、びっくりしました。
デザイナーさんが選んだ1冊はなんと『自由研究図鑑』(有沢重雄 文、月本佳代美 絵)
何で!?という言葉は心に秘めておきましたが、驚いたことは事実です。しかし、戸惑いながらも撮影をスタートすると、出るわ出るわ、西嶋さんの口が止まりません笑
西嶋さんが『自由研究図鑑』と出会ったのは小学校の図書館。
セミの羽化の観察、小石の標本作り、メダカの飼い方、豆腐の作り方(?)、リトマス紙の作り方(??)、何もないところから何が生えてくるかの観察(???)などなど、幅広く好奇心を刺激される研究が紹介されています。
出会った当時は描かれている絵と文章をフンフン楽しんでいただけだったそうですが、この時に「図鑑」が西嶋少年の心に住み着いたのでしょう。大人になってたまたま本屋さんでこの本を見かけた時に、西嶋さんは一瞬で少年時代に引き戻され、気付けばお買い上げ。こうして西嶋さんの自由研究が再び動き出しました。
驚いたことに『自由研究図鑑』で紹介されている研究の中には、今でも西嶋さんがされているものがありました。
足元の「マンホールの蓋ウォッチング」、建物や家の中にあるものに隠れた顔を探す「フェイスハンティング」、「絵文字マークの研究」、「のれんや看板の研究」などはデザインやタイポグラフィの研鑽にも活かされていると言います。
どこにでもいる少年らしく、鬼ごっこをしたり、駄菓子屋さんでたむろしていた小学校時代のあの頃と現在が思いがけず地続きになっていることに、西嶋さんも感慨深げでした。
365日、身近なふしぎに囲まれたデザイナー
ライフワークとして「今日は何の日」をテーマに1日1案1デザインに取り組む西嶋さん。
その日が何の日なのかによるところもありますが、西嶋さんのデザインには親しみを感じるものが多いような気がします。素晴らしいデザインでも、自分たちの方に引きつけて見ることができないようなものだと、なかなか楽しむことはできません。
会いに行けるデザイナーとしての西嶋さんの真骨頂は『自由研究図鑑』のキャッチコピー「身近なふしぎを探検しよう」にも現れているのではないかと、そう思わずにはいられません。
西嶋さんは時々「僕は365日がお休みですし、365日がお仕事です」ということをおっしゃいます。
自らの生き方に対する大きな責任と自由を思わせる言葉です。365日デザインに取り組み始めて、はや3年目。欠かすことなく毎日コツコツとデザインをする西嶋さん。簡単そうに見えて一番難しいコツコツを「自由」に「研究」し続ける姿はどこか楽しげ。
西嶋さんの背伸びをしない姿勢はあの日の夏休みと地続きになっているからなのではないか、そんなことを思います。
普通の大人にとっての夏休みは遠く彼方へ行ってしまいましたが、西嶋さんの隣には今も夏休みが。西嶋さん自身にはそんな意識はないでしょうが、『自由研究図鑑』を撮っておきに選ぶくらいですから、おそらく近からず遠からずといったところのはず。
思えば図鑑はたくさんのものをコツコツと各ページに収集して出来上がる性格の本です。
今回選ばれた『自由研究図鑑』に限らず図鑑が好きだという西嶋さんが、365日毎日「今日は何の日」なのかを収集しているというのも、何となく頷けます。毎日をささやかに楽しくしてくれるデザイナーの自由研究から、これからも目が離せないなあと思ったり。
撮影を終えて
今回の撮影がこれまでで最も、本と選書者の生活のつながりを感じるものになりました。
デザインと『自由研究図鑑』、一見何の関わりもないように思えるのですが、実際はそうではないのですね。どちらも明確な正解はなく、その気になって向き合うほどに、どこまでも自分任せ。
「自由」の旗頭は常に魅力的ですが、実はとても残酷でシビアなもの。そこを飄々と泳ぐ加古川のデザイナーはとらえどころがありませんが、ぜひ一度会いに行ってみると良いです。サービス精神も旺盛な方です、きっと面白がらせてくれますよ。
というわけで第3回目のホントレートはここまで。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。今後も素敵な人や本との出会いを期待して、バイバイ!
※今回の題字は西嶋さんに書いていただきました。「撮」の字が一部カメラになっている遊びゴコロ!
あなたと大好きな1冊の姿を写真に残しませんか?
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