ホントレート

【#ホントレート 16】こだわりのない世界なんて。物欲刺激ブロガー鳥羽恒彰の撮っておきの1冊

皆さん、こんにちは。今日もだらだらしてますか?

どうも、だらり庵 庵主のクロギタロウです。

「人生に寄り添う1冊を楽しむ人の様子を写真に残したい」

そんな想いと共にスタートした撮っておきの1冊「本とあなたのポートレート」、略して「ホントレート」

16回目となる今回は、シンプルな文章と美しい写真で読む人の物欲をバチバチに刺激する罪深きブロガーさんの教えてくれた1冊です。

そんな方が読み返すたびにインスピレーションを得ているという本を持ってきてくれました。これは気になりますね。いったいどんな「撮っておきの1冊」だったのでしょうか、早速教えてもらいましょう!

お話を伺った人

鳥羽恒彰さん

1993年生まれ、東京都在住。隅々まで意識が行き渡った統一感が心地よいモノのレビューブログ「トバログ」を運営。人のカバンに何が入っているのかにフォーカスした「カバンの中身」シリーズなど、魅力的な記事が多数。最近では道ゆく人にインタビューして教えてもらった愛用品やお気に入りについて紹介する「人とモノの交差点を描く」メディア『monomag.tokyo」を開設するなど、ますますその動向から目が離せない。ご存知ないという方、チラッと覗いてみて下さい。たまげますから。

大好きなモノを作る人たちの舞台裏を覗けた1冊

「以前に店頭で見かけて、手にとって、でも買わなくて。ずっと頭の中にモヤモヤと残っていた本なんです」と語る鳥羽さんが『伝わるデザインの思考と技法 雑誌のデザイン(以下 雑誌のデザイン)』(視覚伝達ラボ編集部)を購入したのが昨年のこと。

彼がこの本に惹かれたのにはワケがあり、元々雑誌を読み漁るのが好きだったのだといいます。

雑誌といえばコンセプト、デザインが全体を通して統一感があるのが気持ちいいもの。全ての記事でライターさんが違う、編集者も何人も携わっている。それなのに統一感があるのが面白くないですか、と熱のこもった表情で語ってくれた鳥羽さん。

確かに、読んでいて良いなあと感じる雑誌は、ページごとに好き放題なデザインではなく、どこかにまとまりを感じます。しかもその統一感は雑誌媒体でそれぞれ異なるというのもまた面白いポイントなのだそう。

普段雑誌をそのような視点で読んだことがなかったので、鳥羽さんの言葉に新鮮な驚きを得るとともに、彼がいかに雑誌を読むことが好きなのかが伝わってきました。

鳥羽さんが『雑誌のデザイン』が気になってしまったのも、無理からぬこと。まさに出会うべくして出会った1冊といえるのではないでしょうか。

そんな雑誌好きな鳥羽さんが語る『雑誌のデザイン』の魅力、キーワードは「舞台裏」

誌面を作り上げるノウハウというよりは、実際に雑誌を作っている人たちがどのような哲学や信念、考え方のもとで手と頭を動かしているのかということが覗き見できるのがこの本の面白いところなんですと、少年のような表情で語ってくれた鳥羽さん。

「雑誌のデザインや編集のように、一見するとロジカルの真逆の作業をしているように思われがちな彼らですが、実はそうじゃなくて。全部が全部ではないですが、彼らはほとんどの仕事をロジックをもとに進めているんです。緻密に、正確に。そして、それだけでは対応できないところで経験則や感覚的なものも採用していくという柔軟な姿勢も併せ持っている。そういうことは、この本を読まないと分かりませんでした」

自分の大好きなモノ(雑誌)を形にしている人たちの舞台裏を覗いていた鳥羽さん。いつしか自身の運営するブログにも、そこから得たものを盛り込むようになりました。

統一感へのこだわり

鳥羽さんのブログ「トバログ」を読んでいて印象的なのが、ページ全体の統一感。白を基調とした構成で、ブログ内に登場する写真もシンプルなものが多く見受けられます。落ち着いた気持ちで記事や写真に集中できる、とても素敵なブログデザイン。随所に見られる「こだわり」、これもまた元々の彼の素質と『雑誌のデザイン』とが出会うことでブラッシュアップされたポイントの1つなのでした。

「トバログ」のイメージカラーである白に関しては、高校生の頃から身の回りのものを白で統一するということをやっていたのだそう。ニンテンドーDSやPSP、携帯電話のボディカラーを白にしていたといいます。すでに統一することに関しての素質は持ち合わせていたようです。

そんな彼が『雑誌のデザイン』で目にした、雑誌を作る者たちのこだわりが「トバログ」をさらに上のステージに引き上げたのかもしれません。

全てを自ら手がけてZINE(個人雑誌)を作っている人が、取材地で撮影されたフィルムを、わざわざ現地の現像所で現像するというこだわり。

校正段階で見逃してしまったデザインの1mmの狂いに違和感を覚える感覚の凄み。

こだわり抜いて面白いものを作ってやろうとする、ある種バケモノのような人たちの仕事ぶりに2000円出せば触れることができる『雑誌のデザイン』、恐ろしい本だと思います(この本自体も売れ線狙いではなく、完全保存版を目指して作られている感じがすごく良いんですよと、鳥羽さん談)

やりたいことの多い自分を近道させてくれた1冊

 ブログというカタチにこだわらず、動画や商品開発といった多方面のことに携わりたいという鳥羽さん。いくら彼がスーパーマンでも、与えられている時間は他の人たちと変わりません。だからこそ時間をいかに使うかということが大きな課題になってきます。

『雑誌のデザイン』は自分の進みたい方向への近道を示してくれた1冊だと、鳥羽さんは言います。

意欲さえあれば、手探り状態でも最終的に目指すところに辿り着く自信はあるけれど、それではあまりにも時間がかかりすぎる。ですが、この本と出会って、デザインや技術、生き方・考え方を促成的にステップアップさせることができたのだそうです。

「近道が出来たということは、その分自分のコンテンツに時間を割ける様になったということにもなっているんです」

自らのこだわりたいところに時間をかけるための頼もしい相棒が、今日も鳥羽さんのインスピレーションを刺激しているのですね。

撮影を終えて

今回お話を伺っていて、随分たくさん「こだわり」という言葉が出てきたような印象を受けました。よく考えてみると、「トバログ」のモノ紹介も、「カバンの中身」も『monomag.tokyo』も全部がこだわりに満ちています。

自分だけの世界に閉じこもってこだわるということはどこかの分野で一点突破するほどの力を産むこともありますが、その逆も然りで人間社会自体から一点突破してしまう可能性も秘めています。

しかし鳥羽さんの「他者」への視線に根ざした「開かれたこだわり」は、そのどちらとも違っていてとてもユニークなものだと思います。

多くのこだわりを肯定する「こだわり屋さん」がまだ見たこともない、誰かのこだわりと出会わせてくれるのが楽しみでなりません。

というわけで第16回目のホントレートはここまで。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。今後も素敵な人や本との出会いを期待して、バイバイ!

ホントレートについて ホントレートは「本とあなたのポートレート」を省略したもの。庵主であるクロギタロウの造語です。本をたくさん読む人も、そうでない人にも人生...

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